- なし
# 12
魔術大戦
師暦4192年、大国同士の魔術大戦が開戦した。
長年停戦状態だったのだが、ワールイニン国がヨイヒート国へ先制攻撃をしかけたのだった。
ワールイニン国には、魔術師だけで編成された軍隊が作られるほど多くの魔術師がいた。しかし、1人1人の質が悪く数で攻める方針だった。
それに対しヨイヒート国は、それぞれの隊に数人の魔術師を配置し、質で勝負する方針を変えずに精進を重ねていた。
いよいよ戦火が強まった頃、後に『ケチャク平野の災事』と呼ばれる戦闘が始まった。
ワールイニン国は魔術師軍が後方で援護と増援に力を入れ、武兵は捨て身で猛進する。
ヨイヒート国は守備が要である。武兵による反撃も然ることながら、魔術師のサポートがワールイニン国の比ではない。戦局は、ヨイヒート国が優勢かと思われた。
「ザコクル!」
ワールイニン国の魔導師が叫ぶと、何処からともなく有象無象の土の兵士が湧いて出てきた。数百を超える土兵がヨイヒート国を一斉に攻める。
「キエーテ!」
ヨイヒート国最強魔術師エミナの得意技が炸裂した。半径数メール以内に居る敵を一瞬にして消し去ってしまう大技。防衛魔術の中では最強クラスの技だ。
「オウクル!」
ワールイニン国の魔術師が、また何やら呼び出した。今度は1体だけだが、かなり強そうだ。
『我は魔界の王。貴様らなど瞬く間に消し炭にしてくれるわ!』
なんと、召喚されたのは何処ぞの魔王だった。鋭い眼光に大きな角牙。頑丈な巨躯はどんな攻撃をも跳ね返した。
「「「マオウガキエールトタスーカルー!」」」
ヨイヒート国の魔術師たちが、全魔力を尽くし最大魔術を放った。どんな物理攻撃も跳ね返していた魔王だったが、この魔術には耐えられなかったようだ。
そこからはヨイヒート国軍の快進撃で、ワールイニン国軍を制圧した。
「ヘ··ヘーイワーナドコーヌ、エイゴウニー······」
唯一生き残ったワールイニン国の魔術師が、最後の力を振り絞って呟くように最期の詠唱をしてしまった。
世界に平和が訪れることは、未来永劫なかった。
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